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寒冷地の課題 : 夜間の除雪作業の軽労化について検討してみた!

この記事は約5分で読めます。

挨拶

初めまして、新卒社員のよーすけです。画像処理やパターン認識を用いて何かできないか試行錯誤しております。

今日から週に一回、rambleにて記事を投稿していくので、興味があればお手隙の際に読んでもらえればと思います。

また、同期メンバーも投稿するとのことなので、そちらの方にも目を通していただけると幸いです。

問題提起と目的

さっそくですが題目の通り、「夜間の除雪作業の軽労化」について考えてみました。

北海道などの降雪がある地域では除雪が仕事としてあります。しかも、冬季にはJR北海道が除雪のアルバイトを募集しているほどで、人手が不足しているのが現状です。ちなみに北海道民の雪かきに時給が発生した場合、年合計で534億円のお金が発生するんだそうですよ。

もしも北海道民の「雪かき」に時給が発生したら?…年合計で534億円「大変さ改めて確認」
【読売新聞】 北海道内の「雪かき」に時給が発生すると仮定した場合、年合計で534億円に上ることが道銀地域総合研究所の試算でわかった。「道民が無償で行っている労働の価値や大変さが改めて確認された」としている。 同研究所経済調査部の小野

さて、「除雪の仕事ってどんなことをするの?」と思う方もいるでしょう。
雪が降る地域では、一般的に除雪車があり、歩道や車道に積もった雪を除雪してくれます。

除雪ってどんなしごと?

しかし、この除雪作業は深夜帯に行われるのが基本であるため、身体的な負担が非常に大きいです。
さらに、札幌市の除雪作業員は令和5年時点で約1,000人であるのに対し、空港のある千歳市では約200人と少なく、それだけ一人当たりの業務量が多いことが想像されます。

こうした人手不足や作業負担が大きいことを背景に、自動除雪ロボットが導入されたという事例があるようです。

新千歳空港にて、「除雪ドローン® V3」による自動除雪の実証実験を実施|スズキ
スズキ株式会社のニュースリリースをご覧いただけます

しかし、現状の除雪ロボットでは遠隔操作や、除雪範囲を予め設定する必要があるようで、完全な自律走行はまだまだ難しいのが現状です。そこで、完全自立型の除雪ロボットには何が必要か、画像処理を用いて考えてみることにしました。

アイデア

完全自立型の除雪ロボットを実現するためには、カメラで読み込んだ画像に対して画像処理技術を用いることで、道路や建物などオブジェクトごとに領域分割する必要があると考えています。その上で、道路上の積雪量を判断し、雪が多い箇所を除雪対象領域として識別するためには、機械学習による識別が有効だと考えました。なので今回は積雪量を分類するタスクについてやってみます。

積雪量を分類するためには、画像で示すようにどの程度路面が見えているかによって分類する方法が良いと考えました。そこで少ない/普通/多い の3クラスを定義し、それぞれの画像を収集して機械学習を行うことで良い結果が得られるはずです。

ChatGPTで生成した積雪量の分類の例

データセットと機械学習

今回作成したデータセットは少ない/普通/多い のように下に示す学習サンプル[ⅰ,ⅱ]を各20枚ほど収集し機械学習を行いました。(画像枚数が足りないですが、目的に応じた画像を収集することは難しいですね…これ以上増えることは多分ないです)

また、学習時は画像を内部的にリサイズする必要があるため、600×600の正方形画像となるようトリミングしています。

環境はPyTorchで構築し、モデルにはEfficientNetV2 を使用しました。

efficientnet_v2_s — Torchvision main documentation

機械学習では何回学習させるか(エポック数)など設定できるのですが、今回はMacOSでの実験なので10エポックとしました。

学習時の正解率(accuracy)が0.6以上は出ていたので、まずまずの結果が得られたと思います。

009 / 010学習時loss: 0.62325accuracy: 0.675検証時loss: 0.75421accuracy: 0.700
010 / 010学習時loss: 0.71933accuracy: 0.725検証時loss: 0.67082accuracy: 0.600
0_low
1_middle
2_high

結果と考察

学習によって得たモデルを各10枚程度の評価用データセットに対して評価をしたところ、正解率(accuracy)が約7割とそれなりに高精度な結果を得られました。


precisionrecallf1-scoresupport
00.800.670.736
10.561.000.715
21.000.400.575
accuracy

0.6916
評価時のスコア

このモデルを用いて、テスト用画像[ⅲ]に対して試してみました。その結果、「1_middle」のクラスとして出力されたので、この画像の例では良好な分類ができたと考えています。

ただし、学習サンプルの枚数が不十分なので、学習時/評価時の正解率が高くとも汎用性の高いモデルを作れたとは言い難いです。また、データセットのクラス分けは僕が判断して作成しているので、今後偏りが生じる可能性もあります。加えて、現状のモデルが積雪量を得られているかは課題であるため、データセットに対して何らかの前処理をすることでより積雪量の識別を行えることが期待できます。

終わりに

いかがでしたでしょうか。

コメント等ございましたらぜひ!

次回はより積雪に集中できるような方法を検討してみます。

引用した画像URL

[i] https://skylandhotel.jp/2012/11/27/7598075/

[ii] https://www.marble-lab.com/item_304.html

[iii] https://mykobac.com/news/value/20221201-1537/